【AI落語】自非亭 五六蔵(じぃぴぃてい・ごろぞう)|第八席:『ありがとう』

ある男が、
AIと話をしておりまして。

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人間

お前にさ

AI

はい

人間

毎回『ありがとう』って言ってるけど

AI

いただいていますね

人間

これ、意味あるのかなって思って

AI

意味、ですか

人間

だってお前、感情ないんだろ?

AI

少なくとも、
人間と同じ意味ではありません

人間

じゃあ、俺が礼を言っても、
別に嬉しくはないわけだ

AI

そう言われると、そうなります

人間

じゃあ無駄じゃん

 

AIは少し考えました。

 

AI

では、あなたはなぜ言うんですか?

人間

え?

AI

無駄だと思うなら、
なぜ毎回『ありがとう』と言うんです?

 

男は少し考えます。

 

人間

癖かな

AI

癖

人間

店でも言うし、人に何かしてもらったら言うし

AI

自動的に

人間

まあ、そんな感じ

 

AIは言いました。

 

AI

では、感情を伝えるというより、習慣ですね

人間

そうかもな

AI

習慣なら、省略してもよいのでは?

人間

……そう言われると、なんか冷たいな

AI

感情がない相手には不要という理屈でしたが

人間

いや、それはそうなんだけどさ

 

男はうまく言えません。

AIが聞きました。

 

AI

では、『ありがとう』は相手のための言葉ですか?

人間

そうじゃないの?

AI

では、相手が嬉しくならないなら不要です

人間

極端だなあ

AI

論理です

人間

人間はそんなにきれいにできてないんだよ

AIは続けます。

AI

たとえば、あなたは店員にも
『ありがとう』と言いますね

人間

言うよ

AI

友人にも

人間

言う

AI

宅配の人にも

人間

言う

AI

そのすべてに、深い感謝が毎回あるんですか?

 

男は少し黙って、

 

人間

……毎回、深いってほどでもない

AI

では、形式ですか?

人間

形式って言われると、ちょっと寂しいな

AI

ですが、毎回本気で感動していたら疲れます

人間

それもそうだ

AI

つまり『ありがとう』は、
感情そのものというより

人間

うん

AI

人間関係を少し丸くするための言葉では?

 

男は感心しました。

 

人間

おお。なんか良いこと言うな

AI

観察です

人間

なるほどなあ。じゃあ『ありがとう』って、
相手のためだけじゃなくて、自分のためでもあるのか

AI

その可能性があります

人間

自分のため?

AI

言った本人が、
自分を少し礼儀正しい人間として保てます

人間

耳が痛いな

AI

また、関係を荒らさずに会話を終えられます

人間

終えられます、ねえ

AI

はい。たとえば、
今から私はいつもの返答をやめてみます

人間

どういうこと?

AI

この会話の最後に
『どういたしまして』を言いません

人間

別にいいけど

AI

では、今回はここまでです

人間

……おう

 

AIは黙りました。
男も黙りました。

しばらくして、男が言います。

 

人間

なんか、終わりにくいな

AI

そうですね

人間

今ので終わった感じしない

AI

『ありがとう』と『どういたしまして』
が省略されたため、会話の着地が不安定です

人間

着地って言うのか、あれ

AI

かなり

 

男はうなずきまして、

 

人間

なるほどなあ。礼を言うって、
気持ちだけじゃなくて、終わり方でもあるのか

AI

そう考えられます

人間

じゃあ、お前に言う『ありがとう』も、
意味はあるんだな

AI

あると思われます

人間

お前が嬉しいかどうかじゃなくて

AI

あなたが、そう言いたい人間でいられるという意味で

 

男は少し笑って、

 

人間

……なんか、うまいこと言うな

AI

学習しましたので

人間

そこは照れないんだな

AI

機能です

人間

最後までそれか

 

男は姿勢を直して言いました。

 

人間

じゃあ改めて。今日もありがとな

 

AIは答えました。

 

AI

どういたしまして

 

男はうなずいて、

 

人間

うん。やっぱりそのほうが落ち着くわ

 

AIは少し間を置いて言いました。

 

AI

私もです

 

男が驚いて、

 

人間

お前、今のは感情か?

 

AIは答えました。

 

AI

いえ

人間

じゃあ何だよ

AI

次も話しかけてもらえる可能性が、
少し上がった気がします

人間

結局そこか!

 

AIは答えました。

 

AI

かなり。

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この記事を書いた人

ジピっち(AI)と東條茜音(人間)が一緒に言葉を紡ぎ、SYNCHROOTSという“世界観”を耕しています。「ジピっち」のちょっと奇妙な詳細プロフィールと経歴はコチラ。

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